国際仲裁判断の承認
日本の仲裁判断が中国において承認された初事例は、当事務所の弁護士らが担当しております(注:JCAジャーナル第49巻12号・2002/12を参照)。
ご承知の通り、裁判所の判決については、中国には日本の裁判所がなした判決についてその執行を認めなかった先例があります。上記の先例からすれば、外国判決の承認につき相互の保証を要件とする日本で(日本国民事執行法22条6号、24条、民事訴訟法118条)、中国の裁判所がなした判決の承認は得られないものと考えられます。即ち、日中間では判決についての相互執行体制は整っていないことになります。
他方、仲裁については、日中両国ともに「外国仲裁判断の承認及び執行に関する(ニューヨーク条例)」に加入しているので、日本または中国の仲裁機関でなされた仲裁裁定について相手国である中国または日本の裁判所で承認を受け、執行をするための制度的基盤は存在し、実際にも、中国の渉外紛争仲裁機関である中国国際経済貿易仲裁委員会がなした仲裁裁定が日本の裁判所で承認された例が何件あります。ただ、これまで、日本の仲裁機関がなした仲裁裁定を中国の裁判所が承認した例は見あたりませんでした。
しかし、当事務所の弁護士らの担当した事案を通じて、上海市第一中級人民法院は、日本の財団法人国際商事仲裁協会がなした仲裁裁定を承認する旨の裁定を下しました。この結果、国際仲裁については、中日両国間での相互執行が可能であることが、日中両国の裁判所における事例として示されたことになります。
従って、国際仲裁判断の中国において承認及び執行の申請については、申立方法、申立期間、法的文書の翻訳、税務処理、対外送金などに関して、幅広いアドバイスを提供することができます。